魯迅と並ぶ中国人気作家 郁達夫の研究書出版
甲南大・胡教授 郁達夫の研究書出版
中国の近代文学を代表する魯迅(ろじん)と並ぶ作家として現代中国で人気が出ている郁達夫(いくたっぷ=1986-1945年)の研究書が、甲南大学の胡金定(こ・きんてい)教授(47)によって著された。
郁は魯迅と同時代に日本に留学し、魯迅を人生の師として仰ぎ、文学的な交流があった。その小説は力強い主観、感傷的、叙情的な詩風、軽妙な筆致を併せ持ち、近代中国の小説に大きな影響を及ぼした。
中国文学の評論家、竹内好は郁を「広さにおいて魯迅に劣り、深さにおいて優る。この人を除いて新文学はない」と高く評価した。
本書は「郁達夫の小説の特徴」など8章構成。胡さんは、郁が大正時代に日本に留学して志賀直哉、佐藤春夫、葛西善蔵の私小説に大きく影響を受けたことや、郁が日本留学中の経験をそのまま題材にしたデビュー作「沈淪(ちんりん)」をはじめ、郁の全集を読んだ自身の青年期の感想などを紹介している。
さらに郁を「中国現代文学史上において独特の創作方法を持ち、小説や散文、古典詩などの分野で大きな成果を挙げた」とし、「創作方法は近代中国小説に大きな影響を及ぼした。日本でも多くの人に読んでもらいたい」としている。
大阪日日新聞・2003年8月16日